日本でハイキング (1):日本の山とその魅力について

日本にある観光名所を一通り訪れた後、さあ、次は何をしようと考えると頭に思い浮かぶのは何でしょう?例えばハイキングでしょうか。大自然を満喫するだけでなく独特な文化にも触れられることから、日本でのハイキング・登山は旅行の目的として注目されています。

知っておきたい日本の山の特徴

ハイキングは旅のハイライトにもなる魅力的なアクティビティ。山でのハイキングをより楽しむために知っておきたい日本の山の特徴をまとめてみました。

日本は山地が多く、ハイキングコースが整備されている山が多い。

日本の国土は約70%が山地です。多くの都市は山々に囲まれた環境にあります。例えば東京都でさえ西部地域は山岳地帯であり、都心から電車で1時間ほど行けばハイキングが楽しめます。観光地の近くでもハイキングができる場所は比較的に容易に探せるので、観光+ハイキング(ウォーキング)+温泉or旅館滞在という組み合わせで、日本ならではの旅を計画できます。


秩父、宝登山のハイキングコース

Tsukubasan (Mt Tsukuba)
茨城県、筑波山の山道はたくさんの大岩が。

初心者から上級者向けハイキングコース多数あり。

ハイキングコースは数百メートル級の小さい山から数千メートル級の大きな山に整備されています。日帰りで行けるハイキングコースから本格的なトレッキングまで多様です。

数百メートル級の山には初級者~中級者向けのハイキングコースがあります。遊歩道が整備されているので年配のハイカーにも向いています。例えば、富士山の周辺にある山々にはこの様なハイキングコースが多く、道中や山頂から眺める富士山の絶景が大きな魅力となっています。人によっては口にする「富士山は登る山でなく、眺める山だ。」という言葉の意味を体感できるコースです。

1000m以上の高い山は中級~上級者向けです。日本で一番高い山は富士山の3779m、次いで高いのは北岳の3193mです。本州の中央辺りに位置する日本アルプスには北岳をはじめとする2000m~3000m級の山が連なっており、夏にはクライマーで賑わいます。
アメリカ大陸のロッキー山脈には及ばない高さではあるものの、起伏に富んだ環境と険しさがあります。2000m以上の山はハイキングでなく本格的な登山:クライミング・トレッキングと考えるべきです。観光旅行との組み合わせで行くとするなら、ロープウェイで行ける場所がお勧めです。

Kiso Komagatake
木曽駒ケ岳の千畳敷カール

日本の山は火山が多い

1500mを超える*山の多くは火山です。(*目安です。それより低くても火山の山は多数あり。)荒涼とした火口の迫力には怖さを覚えつつもゾクゾクと魅了されるものがあります。有名な山の多くは火山であり、その一つには富士山が挙げられます。以前、富士山は休火山とされていましたが、噴火の危険がないと勘違いされることがあるため、現在は活火山とされています。火山活動は気象庁が観測し、情報を発信してくれていますが、いつ噴火するかは100%予測できるものではありません。火山を登るにあたっては、ハイカー自身の相応の準備と心構えが求められます。尚、火山な危険な状態になると、入山禁止となります。

火山の恩恵で近くに温泉がある

日本には温泉が湧きでる場所が数多く点在しており、ハイキングコースが整備されている山の近辺にはたいてい温泉(街)があります。ハイキングが目的であっても、温泉は外せないというハイカーは少なくありません。ハイキングの後に温泉に立ち寄って疲れた体を癒す、あるいは、ちょっと贅沢な旅館に泊まって食事と温泉を堪能する、というのがハイキング旅行の楽しみ方のひとつとなっています。

Unzen
北海道、硫黄山

Unzen
北九州、雲仙温泉

多種多様な樹木と季節で変わる山の風景

日本は南北に長い島国であるため、北部は亜寒帯で南部は亜熱帯とように気候は様々です。
針葉樹から広葉樹まで、多様な植物に出会えます。北部や標高の高い地域では寒い地方独特の樹木が自生しており、東南アジアからの旅行者には珍しい景色と目に映ります。ヨーロッパからの旅行者にとっては南部の沖縄に自生するヤシの木やマングローブが珍しく映るはずです。また、日本は四季がはっきりしており、秋の紅葉、春の新緑といった具合に、訪れる季節によって違う景色のハイキングが楽しめます。


長野県、上高地

Okinawa Ishigaki Island
沖縄、石垣島

山岳信仰と深く結びついた山が多い

日本の山の多くは神と崇められ、山岳信仰は長い歴史の中で変化しながら日本の文化と交わってきました。多くの山は霊峰と呼ばれ、信仰の対象となっています。 その概念を理解するのはちょっとややこしいものがあるので、山岳信仰の捉え方を(主観的に)ざっくりと3つに分けてみました。

1.山自体を神と崇める信仰 (アニミズムanimism)

古来より日本では、自然界の木や岩や山などには神が宿ると考えられています。山そのものが神という考え方です。

この考えに基づき、山の頂上には神様を祀る小さな祠があります。大きさは様々ですがH1m x W1m程度です。山頂まで登ってきたハイカーたちの多くは、この祠を見ると無事に登頂できた悦びを感じ、感謝します。そして、無事に下山できることを祈って下山していきます。

2.神様が鎮座する場所として山を崇める信仰

ギリシャ神話のストーリーのように、日本の神話にも多くの神様が登場します。それら神々は神道という信仰と結びついて崇められ、神社で祀られるようになりました。神道において神話に出てくる神様は日本各地に住んでいるとされ、神様が鎮座している山には神社が建立され、崇拝の対象となりました。

例えば富士山の頂上には浅間大社という神社があります。この神社に祀られているのは「木花咲耶姫コノハナサクヤヒメ」という女神です。この姫にはお姉さんがいます。磐長姫命(いわながひめのみこと)という女神で伊豆半島の南西に烏帽子山に鎮座しています。

山の神様は女神とされています。女性が山に登ると山の神様が嫉妬して災いを起こすと言われ、昔は女人禁制の山が多くありました。19世紀初頭、初めて富士山に登った日本人女性は男性に変装して登ったそうです。

3.修行の場所

山岳信仰は仏教徒とも習合し、修行道にも発展しました。険しい崖を登る、滝に打たれるというような過酷な修行によって心身を鍛錬するというものです。修行者は山伏と呼ばれ、独特の白装束姿をしています。忍者を白く、且つ、ちょっと派手したような装束です。修験道を体験できる山は今でもあります。極めて過酷なので自己責任の修行です。ヨーロッパで増えている若者の巡礼と同様に、宗教的な理由というよりも自分探しを目的に体験したい人が増えています。

Tsukubasan
筑波山山頂の祠